マートルの花
ロイヤルウェディングで私の一番の興味はケイトさん(現キャサリン妃)が持つブーケでした。残念ながら、そのブーケについては日本の報道ではほとんど触れられることがありませんでした。
ダイアナ妃のキャスケードスタイルの豪華なブーケに比べるとかなり小さくて、可愛らしいものでしたね。
ウェディングドレスのレースの図案となっているthistle・あざみ(スコットランドの国花)、rose・バラ(イングランドの国花)、shamrock・.シャムロック(アイルランドの国花)、daffodil・水仙(ウェールズの国花)に合わせたブーケとのこと。
シールド(盾)・シェープのブーケで、マートル、スズラン、ヒヤシンス、スイート・ウィリアムで作られていました。
王室の伝統と花言葉から選ばれた花です。
花ことばの意味は、
スズラン:繰り返される幸せ
ヒヤシンス:永遠の愛
アイビー:貞節
マートル:結婚の象徴、愛
そしてスイート・ウィリアムの花言葉は「勇敢」となっていますが、ウィリアム王子の名前をこの花に重ね「優しいウィリアム王子」の意でこの花を選んだとのこと。イギリス人独特のユーモアのセンスを感じますね。
特にマートルを結婚式のブーケに入れることは、ビクトリア女王の長女であるビクトリア王女が1858年に結婚する際、ビクトリア女王がマートルをブーケに入れたことから始まった英国王室ならではの習慣です。
そのマートルは、そもそもビクトリア女王がアルバート公と一緒に訪ねたドイツでアルバート公の祖母から贈られたブーケに入っていたものでした。
そのマートルの一枝をワイト島の二人の別荘、オズボーンハウスのテラスに植え、それがいまや大きな茂みとなっています。
ケイトさんのブーケにもこのワイト島の大きく茂ったマートルの枝が入れられたことと思います。
ビクトリア女王とマートルに関しては、「ハーブ祝祭暦」(教文館)、現在発売中の「野菜をつくろうVol2」(集英社)に詳しく書いていますので、ぜひご覧になってください。
ケイトさんのブーケのデザインはShane Connolly氏というロンドンを基盤に活躍するフラワーデザイナー。王室とのかかわりも深く、チャールズ皇太子とカミラ夫人の結婚式では、ブーケを含むウェディングの花をすべて担当したとのこと。
今回のロイヤルウェディングでは、父親譲りに環境問題に敏感なウィリアム王子が、「エコフレンドリー」な式を目指したいとの意向から彼が選ばれたといいます。
彼はオーガニックで栽培した花や、その場限りではない鉢植えの木などを使用するからです。
ウェストミンスター寺院に飾られたグリーンが目を引きましたが、これもConnolly氏のアレンジで、鉢に植わった8本のMaple(メープル)とHornbeam(シデ)の木でした。この木もお二人の意向でウェストミンスター寺院に5月6日までそのまま飾られ、その後チャールズ皇太子のハイグローブの庭に植えられることになっているそうです。
式の後、このウェディング・ブーケは、第一次世界大戦で命を落とした兵士たちのお墓に捧げられるとのこと。
この習慣も英国王室の伝統で、1923年に現エリザベス女王の母であるクイーンマザーが始めたことでした。
古きものを大切にするイギリス人の心がこのブーケひとつにもたくさんこめられていることを感じます。
ここに書いたような内容をさらにふくらませてウェディングにまつわるハーブや花、ケーキ、などの習慣、文学などについてイギリスのスライドと合わせてご紹介する講座を5月14日(土)13時より池袋コミュニティ・クラブで行います。詳しくはこちらをご覧ください。
ご興味のある方のご参加を心からお待ちしています。
参考にしたサイト:
http://www.officialroyalwedding2011.org/blog/2011/April/29/The-Wedding-Dress--Bridesmaids--Dresses-and-Pages--Uniforms
http://omg.yahoo.com/news/kate-middletons-royal-wedding-bouquet-all-the-details/61772 (このサイトにはブーケをアップにした写真が載っています)